417 名前:あなたのうしろに名無しさんが・・・ [sage]投稿日:03/03/0315:55
小学生の頃、私は少年サッカーのチームに入っていました。

ある日の放課後、私達はいつものようにサッカーの練習をしていました。
その日は、グランドを二分割し、一方でソフトボールの練習もやっていました。
パスの練習をしている時、私の相方が見当はずれの方向にパスを蹴り、
ボールはコロコロと転がって、グランドの端にある渡り廊下に入り込んでしまいました。
しかたなく、私は小走りでボールを取りに行きました。

その渡り廊下は、校舎と講堂をつなぐものでした。
風雨を避けるために、白い半透明の波板で囲われていましたが、
陽光が透けて、中は明るい感じです。
一方の壁際には下駄箱が並び、もう一方の側には傘立てが一列に置かれていました。
その傘立ての隙間に、サッカーボールが入り込んでいます。
それを拾って廊下から出ようとした時、
ソフトボールの練習をしている子が外から大声で呼びかけてきました。
「おーい、そっちへタマ行ったぞー。」
どうやら、誰かの打球が大フライとなってこっちへ飛んで来るようです。
廊下を囲っている波板はプラスチック製なので、
ボールが屋根を突き抜けてしまうことも時々ありました。

418 名前:417つづきです [sage]投稿日:03/03/0315:58
とっさに逃げようと思ったのですが、
外の様子が殆どわからず、どこにボールが飛んでくるのか判らない。
渡り廊下から出ようにも、あと2〜3秒くらいしか時間がない。
結局、その場から動かずに、ボールが落ちてくるのを待つことにしました。
ソフトボールだから屋根でバウンドするかもしれないし、
当たってもそんなに痛くないだろう、そう考えていました。

外からは「当たる当たる!」などと叫ぶ数人の声が聞こえてきます・・・

バンッ!

大きな音がして、目の前を黒い影が横切りました。
スピードが速すぎて、殆ど何も見えませんでしたが、
ボールが天井を突き破ったのだな、と思いました。
それにしては、音が大きすぎるような気もしたのですが、
あまり気にすることなく、足下に視線を落としました。

足先から30?くらい離れたところに、石がありました。
拳二つ分くらいの大きな石が、コンクリートの床を割って、半分くらいめり込んでいます。
とっさに何が起きたのか判らず、白っぽいその石と割れた床をボーっと見ていました。

419 名前:417おわりです投稿日:03/03/0315:59
おーい、当たらんかったかぁ」
その時、ソフトボールをしていた子供が、渡り廊下に飛び込んできました。
「何してるんや?」
私が今しがた見たままの事を伝えると、その子は怪訝な表情になりました。
彼は、ボールが渡り廊下の屋根を突き破ったのを見て、
私に当たっていたらマズイと思い、慌てて飛び込んできたそうです。
石の事を聞くと、そんなものは見ていない、と答えました。

外に出て他の子供に聞いたのですが、彼の見たことと大体同じでした。
数人で石の所へ戻ってみると、石は相変わらず床にめり込んだままでした。
取り上げてみると、特に変わったところのない、白っぽい普通の石です。
熱くも冷たくもない、その辺に転がっているような石でした。
渡り廊下の天井に他に穴は空いていませんでしたから、
屋根を突き破ったのは、この石に間違いありません。
「じゃあボールはどこへ行ったんだ?」
皆でソフトボールを探しましたが、結局見つかりませんでした。

どう考えてもボールが石に変わったとしか思えませんでしたが、
言ってみれば、ただそれだけのことで、
誰かが不幸に見舞われたり、石のことを聞いて回る謎の人物が現れたり、
そんなドラマチックな展開は一切無かったので、それっきり忘れていました。

今、思い出しても全然怖くない、不思議な思い出です。


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