102本当にあった怖い名無し :2005/03/28(月) 21:35:04 ID:2dPoLN2W0
 西洋の怪奇短編集の編者あとがきで読んだ話。うろ覚えでごめん。
(本のタイトルも失念)
 編者の高校の漢文の先生が、若いころ、散歩の途中で一匹のナメクジが、
じっと前方の樹を見つめているのを見つけた。はて、こいつはどうしようと
いうんだろうかと見ていると、いつの間にかナメクジの体の周囲に靄のよう
なものが立ちはじめ、やがてナメクジは靄の中に隠れて見えなくなった。
 どうなるのかとなおも見つめていると、靄の中から一条の細い光の糸のよ
うなものがするすると伸びて、その先端が前方の樹の幹に達した。ふと見る
と地面にいたはずのナメクジが消えており、いつの間にか樹の幹に移動して
いるではないか。
「ほう、知らなかった。ナメクジはこうやって移動するものなのか」
 と先生は感心したが、そのことを他人には言わなかった。
 それから何年も経って、ある寄り合いで「錯覚だったのかもしれません
が…」と、若いころの自分が見た話を披露した。寄り合いが終わり、帰り
かけると、参加者の一人が先生のところに来てこう言った。
「ナメクジの話をされましたね。だれにも話していないんですが…実はそ
れ、私も郷里で見たことがあるんです…」

104本当にあった怖い名無し [sage]:2005/03/29(火) 00:32:32 ID:iZ0orDP70
>>102
その本は「怪談の悦び」(創元推理文庫)、
件の教師は板谷菊男氏。
「天狗童子」という短編小説集も出しておられる。


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