271本当にあった怖い名無し [sage] :2007/03/29(木) 16:20:12 ID:Y5E1t8jjO
あれはまだ私が十歳頃のお話です。
当時の日本は大東亞戦争の真っ直中でした。
日々迫りくる戦火から逃れるため、私達一家は東北の山村に疎開しておりました。

ただでさえ配給も少なくなっているのに加え、私達一家が押し寄せた疎開先では食事も満足に与えられない状況でございました。

育ち盛りの食べ盛りであった私は、ひもじい毎日を過ごしておりました。

そんなある日の事です。
村外れの道を歩んでいると、出兵したはずの長兄がいるではないですか。
私は喜び勇んで長兄の元へ駆け寄りました。
長兄は「旨い物がある」と言いながら、私を村の外へと連れていったのです。

小一時間ほど歩んだでしょうか。
目の前には白い米のおむすびが山のように積んであるではないですか。
ひもじかった私はおむすびを手に取り、二つ三つと口に運びました。
久方振りに腹が満たされた私は少し眠気がしてまいりました。
長兄が見守る中で私は横になり、うつらうつらとし始めました。

続きます

272本当にあった怖い名無し [sage] :2007/03/29(木) 16:22:21 ID:Y5E1t8jjO
翌朝になり私は村人に起こされました。
辺りを見回すと、長兄の姿やおむすびは影も形もありません。

私は両手に馬糞を握り締め、口の周りは馬糞だらけという格好をしておりました。
村人が話すには、この辺りでは狸が人を化かすという事でした。


この歳になっても未だに生きておりますが、あの日に食したおむすびの味は生涯忘れられません。

274本当にあった怖い名無し [sage] :2007/03/29(木) 22:19:01 ID:LkqUsKAq0
てゆーかおいくつですか…

275本当にあった怖い名無し [sage] :2007/03/29(木) 22:51:25 ID:Y5E1t8jjO
数えで70歳です。まだまだ若い皆様には負けてませんよ。
老眼鏡は必需ですがね(w)。


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